チケジャムから発信者情報開示の意見照会メールを受けた場合の対応【弁護士解説】

チケジャムから「発信者情報開示に係る意見照会」というメールが届き、どう対応すればよいかわからず不安を感じていませんか。
2024年以降、STARTO ENTERTAINMENT社やヤング・コミュニケーション社がチケット転売サイトに対して大規模な発信者情報開示請求を行っており、多くの出品者に意見照会メールが届いています。
結論として、慌てて開示に同意する必要はありません。ご自身の出品内容(価格、枚数、経緯)を正確に把握した上で、同意・不同意のどちらが適切かを冷静に判断することが重要です。
この記事では、意見照会メールとは何か、「同意」「不同意」それぞれを選んだ場合にどうなるのか、判断のポイントは何かを弁護士が解説します。
意見照会メールとは
チケジャムから届く「発信者情報開示に係る意見照会」は、コンサートの主催者側があなたの氏名・住所・メールアドレス等の開示を求めていることを知らせるものです。
これは情報流通プラットフォーム対処法(旧プロバイダ責任制限法、いわゆる"プロ責法")に基づく手続で、開示請求を受けたサイト運営会社は、発信者(出品者)に対して開示に同意するかどうかを確認することになっています。
意見照会メールが届いたということは、あなたの出品が開示請求の対象になっているということです。
なぜ開示請求されているのか
2024年8月以降、STARTO社とYC社はチケット転売サイトに対して発信者情報開示請求を本格化させています。2025年2月には、チケジャムに対してSnow Manのコンサートチケット転売出品1,589件について開示命令の申立てが行われました(参照:STARTO社公式発表)。
2025年3月には、東京地方裁判所が「本人しか利用できないコンサートチケットを転売出品する行為は、主催者の営業権を侵害する」と判断しました。これはチケット転売出品が違法と司法判断された初めてのケースです(参照:STARTO社公式発表)。
この判決を受けて、今後さらに開示請求が増加することが予想されます。
開示請求の法的根拠は主に以下の2点です。
- 主催者の営業権侵害(業務妨害):入場資格のない人物を入場させようとする行為により、本人確認の強化やチケット無効化対応などの業務負担が生じている
- チケット不正転売禁止法違反:定価を超える価格での反復継続的な転売は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金の対象となる
「同意」「不同意」どちらを選ぶべきか
意見照会書には、情報開示に「同意する」か「同意しない」かを回答する欄があります。
ここでまず理解していただきたいのは、「不同意」の意味です。「不同意」とは、「自分は悪いことをしていない」と主張することではありません。「自分の個人情報を開示すべきかどうかの判断を、サイト運営会社ではなく裁判所に委ねたい」という意思表示です。
チケジャムの運営会社は、あなたの出品が本当に権利侵害にあたるかどうかを判断する立場にはありません。不同意とすれば、主催者側は裁判所に開示命令を申し立てる必要があり、裁判所が「権利侵害が明白である」と認めた場合にのみ開示が命じられます。つまり、不同意とすることは、開示の可否について中立的な第三者である裁判所の判断を求めるという、法律上当然に認められた手続にすぎません。
逆にいえば、安易に同意してしまうと、本来であれば裁判所が開示を認めなかったかもしれない事案でも、自ら個人情報を相手方に渡す結果になりかねません。
その上で、すべての出品者が一律に同意すべきとも、不同意にすべきともいえません。出品の内容や経緯によって、最適な対応は異なります。
不同意で争うことが考えられるケース
以下のような事情がある場合、開示に不同意とし、その理由を意見書として提出することで、開示が認められない可能性があります。
- 定価以下で出品していた場合:チケット不正転売禁止法に違反せず、営業目的の転売とも評価できません。やむを得ない事情でチケットを手放す必要があったのであれば、そもそも権利侵害にあたらない可能性が高いといえます。
- 少数枚数(1~2枚程度)で、転売歴がない場合:「反復継続性」が認められず、先行裁判例(1人8件出品、定価の14倍での転売)とは悪質性の程度が全く異なります。
- 定価を若干上回る程度の出品の場合:差額がわずかであれば、「営業権を侵害するほどの業務妨害」が生じたとは評価しにくい場合があります。
同意した方がよいケース
一方、以下のような場合は、開示に同意した上で早期の示談交渉に入る方が、結果的に負担が軽くなる可能性があります。
- 定価を大幅に超える価格(数倍以上)で出品していた場合
- 複数枚・複数公演にわたって繰り返し出品していた場合
- 転売目的での購入であることが明らかな場合
このような事案では、不同意としても最終的に裁判手続を通じて開示される可能性が高く、交渉の開始が遅れることで相手方の態度が硬化するおそれもあります。
「不同意にすると不利になる」は本当か
STARTO社は公式発表の中で、「転売を反省して開示に同意する人物と、開示を拒否して転売が合法と主張するような人物では、対応に差をつける予定」と述べています(参照:STARTO社公式発表)。
しかし、冷静に考える必要があります。
まず、損害賠償の金額は、転売による実際の損害に基づいて算定されるべきものであり、意見照会への回答内容によって賠償額が直接増減するものではありません。
また、少数枚数・少額の転売に対して訴訟を提起することは、弁護士費用や裁判費用を考えると合理的とはいえません。STARTO社は1,589件もの開示請求を行っていますが、全員に対して個別に訴訟を起こすことは現実的ではなく、基本的には示談での解決が中心になるはずです。
さらに、刑事告訴についても、定価以下や単発の転売に対しては刑事責任を問えません。過去に有罪判決が出た事案(大阪地裁、令和元年)は、定価の最大15倍もの高額で反復的に転売していたという極めて悪質なケースでした。
したがって、「不同意にしたから不利になる」という実質的なリスクは、事案によっては大きくないと考えられます。
開示された後の流れ
情報が開示されると、主催者側から通知書が届きます。STARTO社の公式発表によれば、「当社およびYC社の連名で通知書を送付」し、「ファンクラブの退会措置を実施」しているとのことです(参照:STARTO社公式発表)。
通知書には一般的に以下のような内容が記載されていると考えられます。
- 転売出品が確認された事実の指摘
- 法的責任(損害賠償請求、刑事告訴の可能性)についての説明
- ファンクラブ退会措置の通知
- 損害賠償請求
賠償金額は公表されていませんが、STARTO社は「本人の反省の度合いなどを参考にしながら法的な責任の追及を行っていく予定」としており、出品件数や転売価格、反省の態度などを考慮して個別に決定されるものと考えられます(参照:STARTO社公式発表)。
弁護士に依頼するメリット
意見照会への回答から和解交渉まで、弁護士に依頼することで以下のようなメリットがあります。
- ご自身の出品内容に即した法的リスクの分析ができる:「権利侵害が認められるか」「不同意で争えるか」を、出品価格・枚数・経緯に基づいて具体的に判断します。
- 同意・不同意の判断を適切にサポートできる:単に「不同意」と書くだけでは意味がありません。法的根拠に基づいた意見書を作成することで、開示が認められない可能性を高めることができます。
- 主催者側との交渉を全て代理人が行うため、直接やり取りする負担がなくなる:開示後に通知書が届いた場合も、弁護士が窓口となることで、ご自宅に直接弁護士名義の手紙が届くといった精神的負担を軽減できます。
- 刑事告訴のリスクを踏まえた対応ができる:事案によっては、示談の中で刑事告訴をしない旨の条項を盛り込む交渉も可能です。
当事務所のサポート
当事務所では、チケット転売の開示請求を受けた方の対応をサポートしています。
- 初回相談:30分以内 11,000円(税込・オンライン面談)
- 着手金:33万円(税込)
- 成功報酬:なし
意見照会への対応から主催者側との和解交渉まで、全てのやり取りを弁護士が代行します。
まずはLINEからお気軽にご相談ください。
よくあるご質問
Q. 定価以下で譲っただけなのに開示請求されました。違法ですか?
A. 定価以下であっても、主催者が譲渡を禁止しているチケットを第三者に譲渡すること自体が規約違反となる場合があります。ただし、定価以下での出品は、チケット不正転売禁止法には違反しません。また、営業権侵害が認められるかどうかも、個別の事情によります。定価以下・少数枚数の出品であれば、不同意の意見書を提出して争う余地は十分にあります。
Q. 1~2枚しか出品していませんが、責任を問われますか?
A. 出品枚数が少なくても、開示請求の対象となることはあります。STARTO社のCCO和田建造弁護士も「たった1回、たった1枚でも違法になりうる」と述べています。ただし、枚数や金額、経緯などは交渉において考慮される要素となります。1~2枚程度の出品で、やむを得ない事情があった場合には、不同意で争える可能性があります。
Q. 刑事告訴される可能性はありますか?
A. チケット不正転売禁止法違反として刑事告訴される可能性はゼロではありません。ただし、定価以下や少額での転売に対して刑事手続が進む可能性は極めて低いといえます。過去に有罪判決が出た事案(大阪地裁、令和元年)は、定価の最大15倍もの高額で反復的に転売していたという極めて悪質なケースでした。民事上の和解が成立した場合には、刑事告訴に至らないケースがほとんどです。
Q. 不同意にしたら、もっと厳しく追及されませんか?
A. STARTO社は「対応に差をつける」旨を公表していますが、法的には、意見照会への回答が損害賠償額を直接左右するものではありません。不同意とすること自体は法律上認められた正当な権利であり、それによって賠償額が加算されるという仕組みはありません。ご自身の出品内容に照らして権利侵害が認められにくい事案であれば、不同意で争うことは合理的な選択です。